オンボードグラフィックス+クアッドコア!低予算&省電力な地デジPCを作ろう!!(前編)

ちなみに、最近の経験からすると、現在のデュアルコアCPU+ミドルレンジビデオカードといった標準的な構成では、アイドル時でも消費電力100W以上が普通と言ってよい(ディスプレイなどは除く)。GeForce 8800 GTXのSLI構成で頑張っている知人のFPSゲーマーなどは、「アイドル時でも200Wオーバーッスよ!」とうれしそうに話していたのを覚えている
 
どうせなら安価で省電力で快適に!



●1万円を切る価格で手に入る、Jetwayの780Gマザーボード「PA78M4-H」。microATXだが、メモリが4スロット、Serial ATAポートが六つ、HDMI出力標準装備(DVI変換コネクタ付属)と、装備も申し分ない

Phenom X4 9100eのリテールパッケージ。動作クロックよりも、マルチコアが効果を発揮できる環境なら注目のCPUだ。低価格という点ではPhenom X3なども存在するが、65WというTDPは魅力
 さて、ここで目指すマシンは、

1:フルHDで地デジが快適に見られるマシン
2:常時使用なので省電力なのがよい
3:安いにこしたことはない


 というような感じ。

 TDP 65WとクアッドコアCPUの中ではおそらくもっとも省電力な「Phenom X4 9100e」(1.8GHz)は試してみたい。お値段も2万円台前半とクアッドコアの中では十分安価だ。同様に省電力デュアルコアの「Athlon X2」系も気になる。

 加えて、AMD CPUなら現在内蔵グラフィックス機能ではもっとも高性能と思われる「AMD 780G」チップセット搭載マザーボードが使用できるのもポイントだ。

 Radeon HD 3200とされるグラフィックス機能には、動画再生支援機能の「Avivo HD」などもあり、地デジ視聴時のCPU負荷低減も期待できそうだ。もちろん、ビデオカードが不要となればそれだけ安価かつ省電力に作ることができる。

 ということで、組んでみたのはこんなスペック。


<パーツリスト>
CPU
AMD Phenom X4 9100e 21,000円前後
マザーボード
Jetway PA78M4-H
AMD 780G+SB700、microATX) 10,000円前後
メモリ
バッファロー FSH1066D2C-K2G
(DDR2 SDRAM 1GB×2) 7,000円前後
HDD
Western Digital WD Caviar GP WD5000AACS
(500GB、Serial ATA2.5) 8,000円前後
光学ドライブ
ソニーNECオプティアーク AD-7200A 4,000円前後
電源
サイズ CoRE PoWERセミプラグイン 400W 5,000円前後
OS
Microsoft Windows Vista
Home Premium SP1 DSP版 15,000円前後
地デジキャプチャカード
バッファロー DT-H50/PCI 20,000円前後
合計  90,000円前後



●今回のテスト風景。ひとまず静音など関係なしということでケースなしである。ケーブルが取り外し可能な電源に、HDMI接続、Serial ATAと、一昔に比べればケーブルもかなりスッキリしてきた
 ケースなしでこの価格。テレビマシンとしては静音性やデザインも重要かとは思うが、それはまた後で考えよう。
 Jetway PA78M4-HはHDMI出力をオンボードで備えたモデルで、ビデオメモリが128MB搭載されている。デフォルトでシェアメモリ256MBも割り当てられるので合計384MB。フルHD画面での使用もこれくらいあれば大丈夫だろう。そのほか、HDDはWestern Digitalの省電力タイプで500GB。地デジなら容量はもっと必要だ!という方もおられるだろうが、今回はこんな感じでカンベン願いたい。

 なお、メモリはやや割高なオーバークロックメモリだが、単にこれは筆者の空いている手持ちがこれだけだったから。肝心の地デジキャプチャカードにはトランスコード機能搭載のバッファロー DT-H50/PCIをチョイスした。

 実際はもっと切り詰められるだろうが、ケースを1万円としても、OS込み10万円以内で組める。OSと地デジキャプチャカードなしだと、6万円前後のベースマシンということになるだろうか。

 とりあえず、これで地デジ環境としてどうなのかを見てみよう。


 
予想以上に省電力!


ワットチェッカーで消費電力をチェック。アイドル時はこんな感じで70W前後。地デジ視聴時の高負荷時でプラス20W程度といったところだ

●今回の環境での「ストリームテスト for 地デジ」の結果。各モードで視聴は可能だが、コマ落ちが発生する可能性が示唆されている

●実際にDPモードで視聴してみても、とくに問題は感じられない。CPU使用率も10%程度とパワー不足感は全くなく、メモリも2GBあれば少々ほかの作業をしても問題ないはず
※画面はハメコミ合成です

 早速、その消費電力を見てみるとしよう。

 BIOSでCool'n'Quietを有効、サスペンドモードをS3に設定と言った省電力設定を行い、OS起動後のアイドル状態をワットチェッカーで確認。この状態の消費電力は70W程度。

 また、1,900×1,200ドットのフルHD表示での地デジ視聴時の消費電力は90〜95W程度で推移しており、100Wを超えることはなかった。クアッドコアの環境としては間違いなく省電力といってよいだろう。

 ちなみに、バッファローがWebサイトで公開している地デジ環境の評価ソフト「ストリームテスト for 地デジ」を試すと、△マークが一つ表示された。DPモード時(地デジ標準の高解像度モード)でコマ落ちする可能性があるとのことで、視聴ソフト「PCastTV for 地デジ」の初回起動時には低解像度・低ビットレートのSPモードになっていた。が、その後DPモードに変更すると、とくに問題は感じられない。

 もしかするとたまにコマ落ちしているのかもしれないが、タイムシフト再生でも、録画データを再生しても、とくに気にならない。タスクマネージャのパフォーマンスタブでCPU使用率をチェックしても、地デジ視聴時で5〜15%程度と、マシンパワーに不足はないはずだ。四つのコアもしっかり動作しているのが分かる。

 なお、どの地デジキャプチャ製品も共通して言えることだが、地デジの録画にCPUパワーはほとんど必要がない。これは送られてくるMPEG2-TSフォーマットの地デジデータをHDDに直接書き込むだけだからだ。今回使用しているDT-H50/PCIでは、低解像度へのリアルタイムトランスレート機能を搭載しているが、この作業もハードウェア(ViXSのXCode-2111チップ)上で行なわれるため、これにかかるCPU負荷はゼロとされている。

 メモリは地デジ視聴時で900MB近く使用しているので、「ながら視聴」しようとすると、1GB程度のメインメモリでは相当厳しいことが分かる。しかも、常時タイムシフト再生のための録画を行なっているので(DT-H50/PCIではタイムシフトをOFFにすることはできない)、スワップが発生するのも避けたいもの。今回、256MBをビデオメモリに使用していることを差し引いても、バッファローの推奨環境でメモリが1.5GB以上となっているのは納得のゆくところである(今回の環境はテスト用に新規インストールしたもので、余計なアプリケーションも少ない状態である)。


 
デュアルコアも試すでしょ!




TDP 45WのAthlon X2 4050eリテールパッケージ。CPUクーラーのヒートシンクPhenom X4 9100eのものより肉厚が少なく、フィンも短い

Athlon X2 4050eでのアイドル時の消費電力。50W程度と低く、間違いなく低消費電力と言ってよいだろう。ちなみにCPUのヒートシンクは高負荷時でもほとんど熱くならない

●△マークが2個になったストリームテスト結果。CPU負荷が高い場合、となっているので、地デジ視聴だけなら問題がないとも読み取れる

●地デジ視聴だけなら、CPU使用率は20%前後。これでも十分なパワーを持っていると言えるだろう。ただ、全体的にクアッドコアのほうがキビキビした動作が感じられる
 クアッドコアがなかなか満足のゆく結果であったため、より安価で省電力なデュアルコアも気になるところ。続いて、同じ環境のままCPUをデュアルコアの省電力CPU、Athlon X2 4050e(2.1GHz)に交換してみた。

 TDP 45Wと省電力ながら実売価格は7千円台と、普通にお買い得である。先にストリームテストを行ってみたところ、△マークが一つ増えていた。コマ落ちと言った分かりやすい問題ではなく、「CPU負荷が高い場合、問題が発生する可能性があります」という漠然とした警告だ。さてどうなるのか。

 アイドル時の消費電力は、さすがにクアッドコアよりはグッと落ちて、50〜55W程度。TDPの値の差がそのまま現われたような数値だが、一般的な家庭用電球で言えば、間違いなく半個分は下がった形だ。「PCastTV for 地デジ」の初回起動時はPhenom X4 9100eの際と同様にSPモードに変更されていたが、再びDPモードに設定。結局、フルHDでとくに問題なく視聴ができている。

 視聴時の消費電力は70W〜80Wというところで、CPU使用率は20%前後。バッファローの推奨設定は、それなりのマージンを取ってあるということだろう。もし同じような△マークが出て、購入を悩んでいる人は、とりあえずまともに視聴できないなどということはなさそうなので安心してもらいたい。

 性能比で考えると、このCPUにしてはCPU負荷が低いように思えるが、これにはRadeon HD 3200の動画再生支援機能も効果を発揮しているのではないだろうか。この辺りの効果も後でもう少ししっかりチェックしてみたいところである。

 Phenom X4 9100eよりも1万円以上は安価で、20W近く省電力。地デジ録画PCとしては、これでも悪くなさそうだ。ただ、本当に地デジ専用とするならともかく、ながら視聴でほかの作業(最近の筆者ならデジタル一眼レフのRAW現像作業)を行おうとすると、やっぱり余裕のあるクアッドコアのほうが快適だ。今後を考えても、ここでケチるのももったいない気がする。

 なお、今回のフルHD表示でのテストは、ディスプレイと直接オンボードHDMI端子を使って接続したが、何の問題もなく使用できた。また、どちらのCPU環境でも、予約録画時のスリープからの自動復帰も問題なく行なわれており、スリープ時の消費電力は4Wであった